年金に控除はあるのか?所得税がかかる年金に適用できる9つの控除

年金を受け取りすぎると税金がかかると聞いたことはありませんか。もうすぐ年金を受け取る予定の方には、理解しづらい部分があるのではないでしょうか。

障害年金と遺族年金は非課税であるものの、老齢年金は一定額以上受け取ると「雑所得」として所得税・復興特別所得税がかかります。

年金に税金がかかっても控除を受けることは可能ですが、各種控除を受けるための条件や控除額は異なります。

そこでこの記事では、各種控除の詳細や控除を受けるために必要な扶養親族等申告書について解説します。

扶養親族の状況が変われば受けられる控除も変わるため、年金を受け取る予定の方だけでなく、すでに年金を受け取っていて税金がかかっていない方もぜひ参考にしてください。

どんな方の年金が所得税の課税対象となるのか

年金を受け取るすべての方が課税対象となるわけではありません。所得税の課税対象となるのは以下のような方です。

  • 65歳未満の方は108万円以上
  • 65歳以上の方は158万円以上

年齢と受給金額で所得税を支払う必要があるかどうかは変わります。そして、課税対象となった場合でも年金に適用できる控除があります。

日本年金機構「年金の受給|老齢年金から源泉徴収される所得税の控除を受けるとき

年金に適用できる9種類の控除

基礎的な公的年金等控除以外に年金に適用できる控除は以下の9種類です。

  • 配偶者控除
  • 扶養控除
  • 特定扶養親族控除
  • 老人扶養親族控除
  • 普通障害者控除
  • 特別障害者控除
  • 同居特別障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除

公的年金等控除は受給者全員に当てはまりますが、9つの控除は受給者本人だけでなく、例えば子どもと同居をしているケースでは、子どもの節税になる場合があります。

月額の控除額も含めて、各控除について詳しく解説しますので、ご自身や家族に当てはまるか考えながら読み進めてみてください。

公益財団法人生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計|公的年金の税金(所得税)はどうやって計算される?

日本年金機構「令和6年分扶養親族等申告書(紙帳票)の記入方法

配偶者控除

控除対象の配偶者がいる方は配偶者控除の利用が可能です。

以下の条件に当てはまれば2024年分の配偶者控除を使えます。

  • 2024年中の所得の見積額が900万円以下の受給者と生計を一にする配偶者で、所得のない方または2024年の所得の見積額が95万円以下の方
  • 2024年中の所得の見積額が900万円を超える受給者と生計を一にする配偶者で、2024年の所得の見積額が48万円以下(または所得がない)で、障害者に該当する方

月額控除額は、その年の12月31日時点で70歳未満の配偶者がいれば1カ月あたり32,500円、70歳以上の配偶者の場合は40,000円です。

扶養控除

その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族がいる方は、扶養控除を適用できます。扶養控除の対象となるのは、受給者本人と生計が同じ配偶者以外の親族で、所得がないか2024年中の所得の見積額が48万円以下の方です。ただし、19歳以上23歳未満もしくは70歳以上の方は除きます。

もし扶養控除を適用できない場合でも、所得の見積額に退職所得が含まれていて退職所得を除いた所得の見積額が48万円以下のケースでは、地方税の控除対象になります。

月額控除額は1カ月あたり32,500円×人数で計算できます。例えば、扶養控除を適用できる扶養親族が2人いる場合は、月額で65,000円の控除を受けられる計算です。

特定扶養親族控除

その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の扶養親族がいる方は、特定扶養親族控除を利用できます。前述の扶養控除の対象外である19歳以上23歳未満の扶養親族がいる場合の控除です。

2024年分の控除の場合、2002年1月2日から2006年1月1日までに生まれた扶養親族がいれば、この控除を使えます。控除額は扶養控除よりも高額になる月額52,500円×人数で計算します。

ちなみに、もし国外に住んでいる扶養親族を扶養控除の対象にしたい場合は一定の要件がありますので、年金事務所に確認するとよいでしょう。

老人扶養親族控除

その年の12月31日時点で70歳以上の控除対象となる扶養親族がいる方は、老人扶養親族控除が使えます。特定扶養親族控除と同様、扶養控除の対象外である70歳以上の扶養親族がいれば控除対象です。

例えば、2024年分の老人扶養親族控除を受ける場合は、1955年1月1日以前に生まれた方を扶養していれば控除を受けられます。老人扶養親族控除も扶養控除より控除額が高く、月額40,000円×人数の分だけ控除が可能です。

この控除は受給者本人が使うケースだけでなく、年金受給者と生計を一にしている年金をまだ受け取っていない子ども世帯が使うケースも考えられます。条件によっては子どもは節税となり、親は国民健康保険料を支払う必要がなくなる場合があるため、両者ともにお得となることがあります。

普通障害者控除

本人・控除対象配偶者・扶養親族のいずれかが障害状態にある方は、普通障害者控除が使えます。

所得税法上の普通障害者は以下の条件に当てはまる方です。

障害の内容 所得税法上における普通障害者の定義
1 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある方
2 精神保健指定医などから知的障害者と判定された方 中度または軽度と判定された方(療育手帳の障害の程度がBの方)
3 精神に障害がある方で精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方 特別障害者以外の方
4 身体障害者手帳に身体上の障害がある方として記載されている方 障害の程度が3級から6級までの方
5 戦傷病者手帳の交付を受けている方 特別障害者以外の方
6 原子爆弾の被爆による障害者として厚生労働大臣の認定を受けている方
7 常に就床を要し、複雑な介護を要する方
8 年齢が65歳以上で、福祉事務所長などから認定されている方 特別障害者以外の方

日本年金機構「障害者とは

普通障害者控除は毎月22,500円×人数分の控除を受けられます。

特別障害者控除

本人・控除対象配偶者・扶養親族のいずれかが重度の障害状態にある方は、特別障害者控除を適用できます。

前述した普通障害者より障害の程度が重い場合、特別障害者に該当します。

障害の内容 所得税法上における特別障害者の定義
1 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある方 該当するすべての方
2 精神保健指定医などから知的障害者と判定された方 重度と判定された方(療育手帳の障害の程度がAの方)
3 精神に障害がある方で精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方 精神障害者保健福祉手帳の障害の程度が1級の方
4 身体障害者手帳に身体上の障害がある方として記載されている方 障害の程度が1級または2級の方
5 戦傷病者手帳の交付を受けている方 障害の程度が恩給法別表第1号表ノ2の特別項症から第3項症までの方
6 原子爆弾の被爆による障害者として厚生労働大臣の認定を受けている方 該当するすべての方
7 常に就床を要し、複雑な介護を要する方 該当するすべての方
8 年齢が65歳以上で、福祉事務所長などから認定されている方 1、2、4の特別障害者と同程度の障害がある方

日本年金機構「障害者とは

特別障害者控除を適用できる場合、毎月35,000円×人数分の控除を受けることが可能です。

同居特別障害者控除

特別障害者である配偶者または扶養親族と同居している方は、同居特別障害者控除で月額62,500円×人数で計算される額を控除可能です。つまり、年額で1人あたり75万円が所得金額から差し引かれます。

同一生計の配偶者や扶養親族が特別障害者で、年金受給者本人やその配偶者または、受給者本人と生計を一にする親族のいずれかと同居している場合に適用されます。

ちなみに、障害者控除は扶養控除の対象とはならない16歳未満の扶養親族がいる場合でも適用可能です。また、扶養親族等申告書の提出の際、障害の程度がわかる証明書は不要なため、障害者手帳などに記載されている内容を正しく記入するようにしましょう。

国税庁「パンフレット『暮らしの税情報』(令和5年度版)|障害者と税

寡婦控除

合計所得金額の見積額が500万円以下の方で、以下に該当する方は寡婦控除を利用できます。寡婦控除は夫の生死が明らかでない場合でも利用可能です。

  • 夫と死別・離別後、婚姻していない方で子ども以外の扶養親族がいる方
  • 夫と死別後、婚姻していない方で扶養親族がいない方

寡婦控除では月額22,500円の控除が受けられます。

ちなみに、住民票の続柄欄に「夫(未届)」といった事実上婚姻関係と同様の事情にあると判断される記載がある方は、寡婦控除は受けられません。

日本年金機構「年金Q&A|Q 寡婦控除、ひとり親控除とは、どのようなものですか。

ひとり親控除

ひとり親控除は男女問わず利用が可能です。本人の所得の見積額が500万円以下で、子どもを扶養する単身の方であれば月額30,000円の控除を受けられます。

なお、ひとり親控除の「子」とは、他の方の同一生計配偶者や扶養親族とされていない方で、受給者本人と生計を同じにする所得額48万円以下の方をいいます。

控除を受けようとする本人の所得が500万円を超える場合や、子の所得が48万円を超える場合は、所得税の控除対象にはなりません。

しかし、受給者本人の退職所得を除いた所得額が500万円以下で、子の所得が48万円以下の場合は地方税の控除対象にはなります。

日本年金機構「年金Q&A|Q 寡婦控除、ひとり親控除とは、どのようなものですか。

控除を受けるには扶養親族等申告書の提出が必須

この記事で紹介した各種控除を受けるには、「扶養親族等申告書」を提出する必要があります。

扶養親族等申告書は、日本年金機構から対象者に9月中旬頃に送られてきます。2024年分は2023年9月14日より順次送られているため、自分が対象でありながら届いていないという場合は、日本年金機構に確認するとよいでしょう。

申告書は、記載されている提出期限を守り、もし提出が遅れた場合でも可能な限り早く提出するようにしてください。

なお、対象とならない方には申告書は送られないため、提出する必要はありません。

日本年金機構「Topics 2023|令和6年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書の紙の提出方法

申告書を提出しても確定申告が必要な場合もある

通常、扶養親族等申告書を提出したら確定申告を行う必要はありません。

ただし、年の途中で扶養親族の人数や状況が変われば控除を受けられなくなる可能性があります。そうすると、税金の過不足が発生するため、所得税等の確定申告をして精算する必要があります。

したがって、あらかじめ申告した扶養親族等申告書の内容に変更が生じた方は、翌年に所得税等の確定申告をしましょう。

また、所得の見積額によって控除対象でないと判断されるケースでも、退職所得を受け取る場合は地方税の控除対象となる場合があります。地方税の控除ができないかを確認することも大切です。

年金を受け取っていて確定申告が必要なケースを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:年金に確定申告は必要?年金をもらいながら働くあなたは注意が必要です!

日本年金機構「年金Q&A|Q 申告書の提出後に申告内容に変更が生じた場合、何か手続きをする必要がありますか。

日本年金機構「令和6年分扶養親族等申告書(紙帳票)の記入方法

年金控除を受けるために申告書は忘れないように提出しよう

この記事では、各種控除の詳細や控除を受ける際の必要書類について解説しました。65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上の年金を受け取っている方は、課税対象となります。

税金を支払う必要がある方は、まずは控除できるものがないか確認してみましょう。どの控除が利用できるか判断がつかない方は、年金事務所や日本年金機構に相談するとよいでしょう。

なお、各種控除を受けるには「扶養親族等申告書」の提出が必要です。

受給者本人だけでなく家族が得できる控除もあるため、ご自身や家族の状況を確認し、控除できる機会を逃さないようにしましょう。

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