事業承継を検討するうえで整理すべき3つのSTEPと、資産の承継方法を解説

事業承継を考える上での大切な3つのSTEP

STEP1:企業(事業)の成長戦略は?

事業承継において最初に検討しなくてはならないのは、長期的に見てどのように会社を成長させていくかです。経営者にとって会社は自分の分身とも言える大切な存在ですが、それでも会社は独立した社会的存在であり、社会的役割を持っています。ですから、これからの社会において会社がどのような役割を果たし、社会にどう貢献していくかを考えることが結局は会社の発展を考えることでもあるのです。
さらに、経営者や長年会社を支えてきた従業員も年齢を重ね、一線を退くときがやってきます。また社会も就業人口の減少や働き方改革など大きく変容しています。将来にわたって会社を安定的に発展させていくにはこれらの状況に的確に対応すること、つまり事業運営を時代にあわせて変革していくことが不可欠といえるでしょう。今後の経営ビジョンを事業計画書の形にまとめ、ステークホルダー(利害関係者)と共有する必要も出てくるかもしれません。長期的な経営ビジョンがしっかり見えている会社とそうでない会社では、前者の方が後継者候補にとっても魅力的に見えるはずですから、企業の方向性をはっきり示しておくことは、後継者が引き継ぎたいという動機付けを、強くさせることにもつながります。

STEP2:企業(事業)の成長戦略にふさわしい後継者や事業承継の方法は?

事業承継の方法は主に、親族承継・MBO(従業員承継)・事業承継型M&Aがあります。詳細は以下の記事をご覧ください。

誰を会社の後継者にするか、どのように事業を承継していくかは、STEP1で考えた事業の方向性を託せるかを十分考慮して決めなければなりません。自分の親族だから、長年尽くしてくれた従業員だからといった理由ではなく、長期的な会社の発展のためにどのような事業承継が望ましいか判断しなければならないのです。事業規模の成長度合いによっては一人の後継者にすべてを任せるのではなく、部門ごとのトップを置いて統括させることを検討してもいいでしょう。事業承継は会社にとって最大の変化といっても過言ではありません。あらゆる選択肢を考え、準備していきましょう。

STEP3:STEP2での承継を達成するのに想定される資産の承継方法は?

それでは資産はどのように承継していけばよいのでしょうか。しっかりと準備をしないと思わぬ負担が生じる可能性もあります。生前贈与や相続税準備、遺言、様々な特例を駆使して、次世代の円滑なコミュニケーションに配慮しながら適切な方法を取っていく必要があります。次章ではこの資産の承継方法について詳しく掘り下げていきます。

資産の承継方法

STEP2で後継者や事業承継の方向性が決まれば、事業承継がスムーズに進むよう資産を承継していくことになります。中小企業では所有と経営が一体になっていることが多く、事業に使っている土地や建物などが経営者個人名義のものであることも珍しくありません。まず、どの財産が誰の名義になっているか整理しましょう。
株式会社の場合、原則として後継者が自社株式の大多数を保有すべきです。資産承継を計画的に進めないと相続の際に法定相続人に自社株式が分散し、株主総会の運営や役員の選任・改選などがスムーズにできなくなる恐れもあります。円滑な事業承継のためには事前の準備が必須と考えてください。

生前贈与
相続税は財産を所有している方が亡くなった時点の遺産総額に応じて課されます。そのため、経営者があらかじめ後継者に財産を贈与する生前贈与が検討されることが多いです。各種特例や制度、控除等について顧問税理士とも相談し適切な対応を取れば、納税資金の確保にも繋がります。ただ、後継者に財産を贈与すると後継者に贈与税がかかる場合もありますし、他の親族への配慮も必要になってきます。
相続税準備
納税資金の確保、後継者のみならず親族全員が納得する分割、また税金に関わる様々な特例措置の活用等、事業承継に関わる相続税準備は山のように考えなければならないことがあります。贈与にも同じことが言えますが租税関係の法律は頻繁に改正されていますから、自分自身でも情報収集のアンテナを張っておくことも重要です。
遺言
遺言は亡くなる方(被相続人)が自分の財産をどうするかを決める最終の意思表示です。遺言がない場合、財産は法定相続分に基づいて相続人に承継されますが、それにより自社株式や会社にとって欠かせない財産が分散してしまい、スムーズな経営に支障をきたすことがあります。また経営者が遺言を残さずに亡くなることで経営者の意向が反映されず混乱を生じさせる恐れもあります。遺言を残すことで事業承継は格段に円滑に進むでしょう。「まだ元気なのに遺言なんて縁起でもない」とおっしゃる方は多いですが、次世代の経営者と会社へ自分が残す贈り物と考えてはいかがでしょうか。遺言は自筆で書き上げることもできますが(自筆証書遺言)、法律の定める形式を守っていなかったり内容が不明確だったりして効力が認められない可能性もあります。遺言は、とくに親族内承継や従業員承継(MBO)の際には非常に重要です。公正証書遺言を活用するなど、万全の準備を整えておきましょう。

事業承継のお悩みや相談はちば興銀へ

オーナー会社の経営者にとって次世代への経営権の引き継ぎである事業承継は、事業の発展と同様に重要な経営課題です。ちば興銀は事業承継のご相談に応じられるサポート体制を整えております。

陣内 壮(じんのうち そう)

陣内 壮(じんのうち そう)

生年月日:1991年3月20日
資格:中小企業診断士、MBA(経営管理修士)
明治大学経営学部を卒業後、中小企業診断士及びMBA(経営管理修士)を取得。 資格取得後は、大手企業中心とした支援に従事