金利が上がるとどうなる?家庭への影響や金利が上がるメリットを解説

金利が上がると、家計に対してどのような影響があるのでしょうか。

例えば、住宅ローンやマイカーローンなど、銀行からお金を借りる際に金利が高ければ、最終返済までにさらに多くのお金が必要です。そのため、金利が上がることに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、普通預金や定期預金などの預金金利も上がるため、貯蓄の利回りは改善します。また、一般的には物価や生命保険料が下がると言われており、家計にとって良い影響ももたらす可能性もあります。

この記事では、金利上昇による家庭への影響やメリットについてわかりやすく解説します。

金利とは

金利とは、お金の貸し借りをする際に適用される利息(利子)の割合です。銀行にお金を預けると利子が付き、預金の種類や預金額に応じた利息を受け取ります。一方、住宅ローンやカードローンなどでお金を借りると、ローンの種類や借入額に応じた利息を支払わなければなりません。

金利は経済状況や金融政策によって変動します。一般的に景気が良くなり物価が上がると、金利を引き上げて借入れや消費を抑えます。反対に景気が低迷すると、金利を引き下げて経済の回復を促します。このように、金利は景気をコントロールする一つの調整弁としての役割も果たしているのです。

金利の動きは、住宅ローンの負担や預金の利息など、日々の暮らしに大きな影響を与えます。

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金利が上がるとどうなる?

金利の変動は、日々の暮らしや経済にさまざまな影響を及ぼします。主な影響をまとめました。

影響範囲 一般的に起こる可能性が高いとされる具体例
企業 借入金がある場合、マイナスの影響を受ける(例:支払利息が増加)
預金がある場合、プラスの影響を受ける(例:受取利息が増加)
円高になった場合、輸入コストが下がり、輸出企業は収益が減少する
家計 円高になった場合、海外旅行費用や輸入品の価格が下がる
生命保険の保険料が下がり、加入しやすくなる
普通預金・定期預金の利息が上がる
(一般的には)物価が下がる
ローン 住宅ローンやカードローンなど、変動金利のローンは返済額が増える

一般的に、日本円の金利が上がると、海外の投資家がより高い利回りを求めて日本円建ての資産を購入する傾向があります。日本円建ての資産とは、日本円で取引される金融資産を指します。これにより、日本円の需要が増加し、円高になると期待されています。

ただし、為替相場は他国の金融政策や経済状況の影響も受けるため、必ずしも円高になるとは限りません。

金利が上がることで企業への影響は?

多くの企業は、銀行などの金融機関から資金を借りて事業を運営しています。金利が上がるとコストが増加し、これまで通りの投資や経営活動が難しくなるケースも増えるでしょう。

帝国データバンクは、企業の借入金利が0.25%上昇すると、新たに1.8%の企業が経常赤字に転落する可能性があると試算しています。

一方、借入れを行わず、金融機関に資金を預け入れている企業にとっては、預金金利の上昇が資産増加につながるため、プラスの影響が見込まれます。

また、金利上昇の影響を受けて円高が進行した場合、輸出入を行う企業に影響が及びます。

輸入企業にとっては、仕入れコストの削減が期待できるため好影響となるでしょう。輸出企業は、円高による価格競争力の低下が課題となり、収益が減少するリスクが生じます。

株式会社帝国データバンク「レポート|日銀の追加利上げが企業に与える影響度調査

金利が上がることで家計への影響は?

金利が上がると、家計にもさまざまな影響を及ぼします。

普通預金や定期預金の利息が増加するため、預金額の多い世帯は、利息収入が増え資産形成しやすくなるのがメリットです。

金利が上がると、生命保険料の予定利率(生命保険会社が契約者に対して約束する運用利回り)が上昇し、終身保険や養老保険など、貯蓄型保険を中心に保険料の引下げが期待できます。

金利上昇によって円高が進行した場合、海外旅行にかかる費用が安くなるのも利点です。海外での宿泊費や食費も割安になるでしょう。また、輸入商品の価格の低下も見込めます。

金利が上がると、借入れコストが増加するため企業も個人も借入額を減らす傾向があります。結果として、需要が減少し、生活必需品や食費の価格など、物価の抑制が期待できるでしょう。

金利が上がることでローンへの影響は?

ローンには「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。

住宅ローンなど、契約時に金利を固定したローンは、金利が上昇しても予定返済額は変わりません。一方、マイカーローンなど、変動金利で借りているローンについては金利上昇の影響を受け、予定返済額が増える可能性があります。

長期にわたって返済が続く住宅ローンや教育ローンは、変動金利の影響を受けやすいため、固定金利への切替えを検討するのも選択肢の1つです。ただし、固定金利は変動金利に比べて基準金利が高めに設定されている場合が多いため、切替え時には注意が必要です。

先述したように、家計への影響はよいものが多く、預金利息収入の増加を中心に年間1.3万円のプラス効果が見込まれます。しかし、ローン保有世帯に限ると、住宅ローン利払いの増加によるマイナス効果が2.8万円と、マイナス効果の方が大きくなることが調査結果から明らかになっています。

みずほリサーチ&テクノロジーズ「日銀の追加利上げが家計に及ぼす影響

金利はどう決まるのか

日本では、中央銀行である日本銀行が定める金融政策の基本方針によって政策金利が決められます。政策金利は、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響します。日本銀行は景気や物価の動向に応じて金利を調整し、経済の安定を図っているのです。

市場の資金の需要と供給のバランスも金利の決定に影響を与えます。お金を借りたい方が増えれば金利が上がり、逆に借り手が減少すると金利が下がります。

さらに、海外の金融政策や国際情勢も日本の金利に影響を与えています。金利は、経済の安定や成長に大きく関わる重要な指標となっているのです。

金利の引上げは「金融引き締め」、金利の引下げは「金融緩和」と呼ばれています。それぞれの特徴について、詳しく解説します。

金利引上げは「金融引締め」

金利の引上げは「金融引締め」とも呼ばれ、景気の過熱やインフレの抑制を目的に行われます。

インフレとは、物価が持続的に上昇し、お金の実質的な価値が下がる状態です。景気が過熱すると、消費や投資が過剰になり、不動産などの資産価格が実体経済とかけ離れて上昇する「バブル化」や企業の設備投資の急増につながります。

金利が上がると、企業や個人が借入れを控えるようになります。同時に、預金金利が上がるため、消費や投資を控え、貯蓄に回すお金が増加します。結果として、市場の資金供給が減り購買力が低下するため、物価の上昇が抑制されます。

このように、金融引締めは、景気の過熱を防ぎ不動産価格や物価の急激な上昇を抑えることができるとされています。

金利引下げは「金融緩和」

金利の引下げは「金融緩和」とも呼ばれ、景気が冷え込んでいる際に経済を刺激し、物価の安定を目的に行われる施策の一つです。

金利が下がると、企業や個人の借入れコストが低くなり、ローンや投資が増加します。同時に、預金金利の低下により、貯蓄よりも消費や投資が促進されるため、市場の資金の流れが活発になるのです。市場が活性化し需要が拡大すると、企業の売上げが伸び、生産や雇用が増加します。

景気が冷え込むと、物価が下がり続けるデフレ状態になりがちです。金融緩和により物価が上昇することで、デフレ防止につながります。

このように、金融緩和を行うことは、市場への資金供給が増え、投資や消費を促進し、経済活動を活発化させることにつながるのです。

アメリカの金利が上がるとどうなる?

アメリカが金利を引き上げると、日本の経済動向は大きな影響を受けることとなり、ドル高・円安の要因となります。

これは、アメリカの金利が上がると米国債などのドル建て資産の利回りが上昇し、投資家にとって魅力が増すためです。ドル建て資産とは、米ドルで取引される金融商品のことを指します。その結果、投資家はより高いリターンを求めて、円を売りドルを購入する動きが強まります。

特に、日本が低金利を維持している場合、日米の金利差が拡大し、市場のドル需要が持続的に高まりさらに円安が進みます。円安が続く要因の1つには、アメリカの金利が上昇する一方、日本は低金利を維持してきたという事実が、大きく関係しているのです。

円安が進むと、輸出企業にとっては有利ですが、輸入業者の負担は増加します。特に、ガソリンやエネルギーなど輸入依存度の高い商品の価格が上昇するため、消費者にとって物価高が続く要因となります。

金利が上がることは悪いことだけじゃない

金利が上がると、借入れコストが増加するため悪影響が心配になる方もいらっしゃるでしょう。例えば、住宅ローンを変動金利で借りている方の中には、ローンの見直しを検討する必要がある方も出てくるでしょう。

一方、普通預金や定期預金などの金利が上がるため、金融機関にお金を預けている方にとっては資産増加が期待できることも魅力です。

また、金利が上昇すると円高効果が見込まれ、輸入業者にとってコストの減少につながります。さらに、インフレ抑制の力も働くため、物価の下落が期待できます。

2025年4月30日現在