MBO(従業員承継)って何?メリット/デメリット/仕組みを解説

MBO(従業員承継)とは

MBO(従業員承継)とは「Management Buy Out」の略称で、現経営者から、経営陣、役員クラスの従業員が事業承継することを指します。M&Aの一種になりますが、特徴としては会社や事業の引き受け手が一般的に現経営陣となることです。
承継させる親族が不在の場合や、親族はいても経営を引き継ぐ気持ちや、任せられるノウハウがない場合に、社内の適正な人物を後継者とする際に活用されています。

EBOとの違いとは?

EBOとは「Employee Buy Out」の略称で、従業員が事業承継する手法のことです。
現場とより近い人物が経営に携わることで社内から受け入れやすくなる場合があります。
経営権を取得するためにはこれから記載のMBOと同様に株式を引き継ぐ必要があります。

MBO(従業員承継)のメリット

同族会社から脱却することの良さを得られる

MBOを実施し、親族以外の人物が意思決定の中心となった際に、これまでの良いところを生かしながら新しい空気や周囲の意見を踏まえた方針を打ち出せることがあります。会社を支える従業員の意見がより反映されやすい環境になることで、従業員のモチベーションアップやイノベーションに繋がることもあります。
会社のことを深く理解している現経営陣が、事業の責任者として牽引していくことで、時代の変化に対応し持続的な成長を遂げることができます。

ガバナンス強化

会社経営においては、株主をはじめ、顧客・従業員・金融機関といった様々なステークホルダーのことを考える必要があります。複数の不祥事等が取り沙汰される現代において、ガバナンス強化が重要であることは言うまでもないでしょう。そういった環境においては、MBOの実施は、経営の透明性を高めることに繋がる場合があります。経費を含めた様々な透明化に繋がる場合もありますし、属人的な判断が中心であった人事が、多面的な評価手法にかわることで、より公平性や客観性が担保されるようになることもあります。結果として、従業員の満足度が高まり持続的な成長に繋がる可能性も高まります。

M&Aと比較すると、周囲からの理解が得やすい

M&Aを行うことが企業の成長に繋がることも十分に考えられますが、MBOは会社の方針や文化を知っている現経営陣が事業を引き継ぐので、従業員や取引先などにも理解してもらいやすく、円滑に進む可能性が高くなります。

MBO(従業員承継)のデメリット

ここまでMBOのメリットについて記載しましたが、当然ながらデメリットもあります。どういったデメリットがあるのか紹介します。

後継者が覚悟を持つ必要がある

MBOで後継者として選出された人物は様々な責任を負います。資金調達をする上で借入の連帯保証人になる場合もあるので、多額の借金を負う可能性もあるでしょう。さらに資金面だけではなく、経営者となると法的・社会的責任が生じるため、何かが起こった際の責任を負う覚悟も求められることになります。
また、引き継ぐ会社の株式を保有することで、自身の相続などについても合わせて考える必要があります。

贈与について反対される可能性がある

MBOは、株式の贈与もしくは売買によって成立します。もし、贈与という選択肢をとる場合には注意が必要です。それは、現経営者の親族からの反対です。現経営者が苦労し経営してきた会社が無償で誰かに譲られてしまうとなれば、親族は反対するかもしれません。トラブルを回避するためにも、周囲とコミュニケーションをしっかりとりながら慎重にすすめる必要があります。

MBO(従業員承継)の流れ

MBOを実施する際のステップは、親族内承継とほとんど同じ流れです。ここでは具体的にどういった流れなのか紹介します。

STEP1:後継者選定、教育

企業の今後のプランに適した従業員を選定します。ただ、いきなり絞り込んで選定するのではなく、多くの候補者から時間をかけて慎重に選択することが重要です。選定後は会社経営・マネジメント・経済学など、経営者に必要な教育を行いましょう。この選定・教育の成否が企業の未来に大きく影響しますので、時間とコストをかけて慎重に進める必要があります。

STEP2:株式承継の準備

現経営者が保有している株式を、後継者へと譲渡する準備をします。多額の資金が必要になる可能性もありますので、後継者は資金面での準備も必要です。後継者に資金面の不安がある場合は持株会社(ホールディングス化)を設立する方法も検討しましょう。持株会社を設立し金融機関から借入を行うことで、資金調達が円滑になります。

【持株会社(ホールディングス化)による事業承継とは】
後継者が持株会社を設立し、既存事業会社の株式を持株会社で買い取ることにより、既存の事業会社の経営権を後継者に移す方法です。こうすることで議決権を円滑に移行することが出来ます。法人設立にあたっては各種法務・税務への対応が必要になります。顧問弁護士あるいは顧問税理士等に相談をしながら進めることをおすすめします。

STEP3:周囲への周知

突然の交代で周囲が不安にならないように、現経営者が従業員や取引先に後継者の紹介をしましょう。後継者の経営ビジョンや人柄を周知させることで、軋轢が生まれにくくなります。後継者の負担にならないように、サポートを行い、社内での理解度を深めることも重要です。

STEP4:遺言、生前贈与の対応

事業承継を行う前に個人としての遺言の作成や、生前贈与を行いましょう。親族と後継者となる人物との関係性が良好に保てるように慎重なコミュニケーションのもと、しっかりと時間をかけて納得感のある資産の分割内容を検討しましょう。

STEP5:保証や担保の交代

株式以外にも、保証や担保などの承継も行う必要があります。経営者個人や会社で借入などを行っている場合は、後継者に引き継ぐケースが想定されます。

事業承継のお悩みや相談はちば興銀へ

会社の経営者にとっては、事業の発展とともに後継者へのスムーズな経営権の承継である「事業承継」は重要な経営課題です。
企業の安定した未来を作るうえでも、ノウハウを持った企業がサポートすることで、より安全な事業承継ができます。
ちば興銀はこうした「事業承継」のご相談にお応えできるサポート体制を整えております。

陣内 壮(じんのうち そう)

陣内 壮(じんのうち そう)

生年月日:1991年3月20日
資格:中小企業診断士、MBA(経営管理修士)
明治大学経営学部を卒業後、中小企業診断士及びMBA(経営管理修士)を取得。 資格取得後は、大手企業中心とした支援に従事