BCPとは?中小企業こそ対策が必須と言える3つの理由

2019年に千葉県内の企業に被害をもたらした台風15号のように、自然災害や大火災、感染症の大流行、テロ攻撃、大規模なシステム障害といった危機的状況は突然発生します。緊急事態において、大切な従業員の雇用やお取引先の信用を守るためには、1日も早く復旧し、事業を継続する必要があります。混乱する状況の中、迅速かつ冷静な対応を行うために役立つのがBCPです。しかし、中小企業においては、策定のノウハウが無い・策定のための人材や時間を捻出できないといった理由で、BCP策定が遅れがちです。この記事では、企業のBCPへの取組状況や、中小企業こそがBCP対策に取り組むべき理由について解説します。

そもそもBCPとは?危機的状況下での事業継続に向けた計画

風水害・地震災害・感染症の大流行など、事業に損害を与えるような緊急事態が起きた場合に備えて、企業はBCPを策定しておく必要があります。BCPとは、危機的状況下において企業価値や従業員の雇用を守り、中核となる事業の継続や早期復旧を目指すための計画のことです。

中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」によると、BCP対策は次の5つの要素に分けられます。

  • ①優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
  • ②緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
  • ③緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく
  • ④事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
  • ⑤全ての従業員と事業継続についてコミュニケーションを図っておく

*注1

BCP対策は大企業・中小企業を問わず、緊急事態の備えとしてすべての企業に必要です。たとえば、生産工場が大地震に遭うと、操業率が大きく低下するリスクがあります。経営基盤が不安定な企業ほど震災後の事業復旧が遅れ、廃業や事業縮小に追い込まれる恐れがあります。日頃からBCP対策に取り組んでいれば、震災後も中核事業を継続し、操業率の早期回復も期待できます。

中小企業こそBCP対策に取り組み、危機的状況への備えを

企業のBCP対策の現状を見ると、中小企業はBCP策定に向けた取り組みが遅れがちです。
帝国データバンクは、全国2万3,675社を対象としたBCPに関する調査を2020年5月に実施(有効回答企業数:1万1,979社)。

「BCPを策定している」と答えた企業は、16.6%となっており、前年の調査よりも1.6%増加しています。一方、企業規模別にみると、BCPを策定している大企業は30.8%なのに対して、中小企業は13.6%、とりわけ小規模企業は7.9%と、企業規模で差が生まれていることが分かります。*注2

BCPの策定で想定されているリスクは、自然災害が70.9%と最多になっています。この傾向は2019年9月に千葉県南部や内房地域を襲った台風15号の影響が考えられます。
台風15号によって、千葉県内の中小企業は甚大な被害を受けました。千葉県では、ビニールハウス、ガラス温室の倒壊による農作物に被害が出たほか、長期停電によって、工場が停止したといった事例が発生しています。

農業以外にも、製造業、飲食業といったさまざまな業種に影響が発生しました。

業種 被害例
食品製造業 強風による被害の多発や電源喪失。
早期復旧を目指すも完全復旧までに4ヵ月強を要した
製造業(その他) 停電による工場の停止によって
通常営業再開にまで1週間を要した
宿泊・飲食 停電による商品食材の廃棄
卸売・小売 停電の復旧に2週間、通信機能の復旧に1ヵ月ほどかかり、
1ヵ月間を携帯電話のみで営業した

*注3

千葉県の災害対策本部会議の試算によると、県内の中小企業の被害額は合計305億7,200万円に上ります。業種別の被害額を見ると、店舗や在庫が大きな被害を受けた卸売・小売企業が81億4,400万円で、全体で最多となっています。次いで、宿泊・飲食サービスの被害額が53億8,800万円、建設業の被害額が36億7,600万円となっています。*注4

被害総額 305億7,200万円
卸売・小売企業 81億4,400万円
宿泊・飲食サービス 53億8,800万円
建設業 36億7,600万円

先述の帝国データバンクによるBCPに関する調査では、都道府県別のBCP策定状況も発表しています。台風15号の影響を受けた千葉県は、「BCPの策定意向あり」(策定している、策定中、策定を検討している)と回答した企業は51.2%となっており、首都圏では4番目であり、関心が高いとはいえません。

台風15号の事例に見られるように、風水害や地震災害が発生すると、中小企業の経営基盤は大きなダメージを受けます。設備資金や運転資金に不安がある中小企業ほど、災害後の早期復旧が難しく、そのまま廃業や事業縮小に追い込まれるケースも少なくありません。中小企業だからこそ、事業継続計画を策定し、BCP対策に取り組む必要があります。

BCP対策で得られる効果

事業の早期復旧が可能になる

大企業と比べて、中小企業は人・資金・設備が限られ、風水害や地震災害の被害を受けやすくなっています。そのため、災害後の復旧が遅れ、企業活動が停止した状態が続いてしまいかねません。

このような事業の停止は、BCP対策を講じることで早期復旧の可能性が高まります。
たとえば、2011年3月に発生した東日本大震災時、事前にBCPを策定していた配電器メーカーは、4日間の停電、10日以上の断水、ガソリンの未着といった状況においても、12日目には被災前の80%のレベルまで生産体制が復旧しています。これは当初の想定を大きく上回る結果となっています。

このようにBCPで初動の手順、復旧作業時に優先すべき業務を明確にしておくことで、事業の早期回復が期待できます。*注5

株主・取引先といった外部の信用を守るためのアピールポイントとなる

株主・取引先といった外部の利害関係者(ステークホルダー)は、企業の危機管理や事業継続能力をチェックしています。BCPを策定し、事業継続能力を証明することで、対外的な信用度の向上につながります。

内閣府が行った「平成29年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、「取引先企業の倒産・事業中断」を、企業活動を取り巻くリスクとして挙げている企業が、全体の30.2%となっています。*注6

この結果から、BCP策定によって倒産・事業中断のリスクを軽減することは取引先へのアピールとなるといえるでしょう。取引先からの信用を得るためにも、BCP対策への取り組みを対外的に示すことは大切です。

BCP対策に取り組むと国や自治体からの優遇や補助金が得られる

国や地方自治体はBCP対策の促進のため、さまざまな支援制度を用意しています。中小企業のBCPである「事業継続力強化計画」を策定した企業は、補助金(ものづくり補助金など)が優先的に採択される、対象の防災・減災設備が税制優遇されるなどのメリットがあります。

これからBCP対策に取り組む企業は、国や地方自治体の支援制度を利用するのもよいでしょう。

企業を取り巻くリスクは様々。外部専門家の意見も取り入れた計画策定を

今回ご紹介した様々なメリットや事例により、企業におけるBCP対策の重要性はご理解いただけたかと思います。近年では自然災害の他にも、コロナウイルスに代表される感染症の大流行や、システム障害による重要データの損失・情報漏えいなど、企業の抱えるリスクは多岐にわたります。すべてを自社だけで対策することは難しく、金融機関など、外部の専門家の意見を取り入れることで、より実効性の高い計画を策定することができます。
次回は、実際に中小企業がとるべきBCP策定のステップに加え、いざという時に頼りになる千葉興業銀行のBCP対策サービスを紹介します。

  • *注1 中小企業庁:中小企業BCP対策運用指針
  • *注2 帝国データバンク: 特別企画 : 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020年)
  • *注3 千葉大学:台風15号による停電被害の概要と災害間比較
  • *注4 千葉県災害対策本部会議 第19回会議資料
  • *注5 業務継続に係る地方公共団体等の対策準備事例
  • *注6 平成29年度 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査
  • *注7 千葉市産業振興財団:事業継続支援

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