CSR(企業の社会的責任)

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への取組みなど

気候変動が地域のお客さまや当行へ大きな影響を及ぼすと考え、
リスクや機会などの情報を適切に開示してまいります。

千葉興業銀行は、2022年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同表明しています。気候変動に関する情報開示に関しては、TCFDの枠組み(「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」)に基づき開示内容の拡充、体制整備の取組み等、適切に対応してまいります。

ガバナンス

当行グループは、気候変動をはじめとする環境問題については「環境方針」を、社会課題の解決については「人権方針」を制定し、地域の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄に貢献すべく、サステナビリティを経営戦略の重要事項の一つとして位置付けて取り組んでおります。
サステナビリティへの取組みについては、取締役頭取を委員長とするサステナビリティ推進委員会にて審議・決定を行い、委員会での取組状況等については、年1回以上定期的に取締役会に報告しております。その他推進方法などについては、「『サステナビリティ』への取組みに関する基本方針」を定めております。
これにより、取締役会がサステナビリティへの取組みに対し適切に監督する体制を構築しております。

【取締役会にて付議・報告した事項(2022年度)】

  1. 1TCFD提言への賛同・開示

    TCFDの4項目に基づいた開示内容の検討

  2. 2サステナビリティ推進委員会の設置

    より発展的な組織体とするため、サステナビリティ推進会議から改組

  3. 3サステナビリティ関連規程の制定等

    環境方針、人権方針、調達に関する取組方針の制定、行動憲章など関連規程の改定

  4. 4サステナビリティに関する取組み状況

    TCFD開示内容の検討(シナリオ分析)、サステナブルファイナンスの推進方法、金融リテラシー教育の取組みなど

<体制図>

戦略

リスクと機会の認識について

当行は、持続可能な社会の実現に向けた気候変動への対応としてリスク(移行リスク、物理的リスク)および機会の両面として捉え、短期(5年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸に基づき、以下の通り認識しております。

分類 種類 内容 時間軸
移行リスク 政策・法規制 ・気候変動に関する政策や規制の強化による、お客さまの事業への影響に伴う与信コストの増大 中期~長期
技術・市場 ・気候変動に起因する市場の変化により、資金調達が困難になる、ないし調達コストの上昇 中期∼長期
・脱炭素社会への移行に伴う新たな技術等の導入や産業構造の変化による既存資産等の現存や収益悪化 中期~長期
評判 ・炭素排出セクターに対する投融資継続によるレピュテーション悪化 短期∼長期
物理的リスク 急性
慢性
・台風・豪雨による風水災に伴うお客さまの事業停滞による業績悪化影響及び担保価値の毀損を通じた与信コストの増大 短期∼長期
・異常気象等による当行資産の毀損に伴う事業継続への影響、管理コストの増加 短期∼長期
・海面上昇によるお客さまおよび当行の営業拠点被災に伴う損失の発生 長期
機会 商品・サービス ・気候変動に関するサステナビリティへの取組みに対するコンサルティングやファイナンスによる支援の増加 短期∼長期
資源効率化 ・省資源、省エネ、再生可能エネルギーの活用による事業コストの低下 短期∼長期

リスク

【シナリオ分析の実施】

今年度はTCFD提言に基づき一定のシナリオのもと、低炭素経済への移行に伴いGHG排出量の多い金融資産の再評価によりもたらされる移行リスク、および気候変動による洪水リスクの影響によりもたらされる物理的リスクについてシナリオ分析を実施いたしました。

【移行リスク】

  • 分析対象としてGHG排出量が比較的高い資産であるエネルギーセクターを選択のうえ、エネルギー関連事業者(電力、ガス、石炭・石油関連の事業者)、鉄鋼関連事業者を個社別に特定いたしました。
  • リスク重要度評価、事業インパクト評価を行い、大規模企業、上場企業については個社別分析を実施(ボトムアップアプローチ)し、その他の事業計画・財務等の多くの情報が得られない先は拡大推計(トップダウン・アプローチ)し、評価いたしました。
項目 概要
リスクイベント ・炭素税導入による費用増加
・脱炭素社会への移行に伴う設備投資、研究開発費の増加
・再生可能エネルギーへの転換に伴う市場影響
シナリオ NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)のシナリオのうち、Net Zero 2050・Below 2℃シナリオ
・NetZero2050:厳しい気候政策等により2050年にネットゼロを達成するシナリオ(1.5℃未満シナリオ)
・Below2℃:やや厳しい政策が導入され、温暖化を2℃以下に抑えるシナリオ(2℃以下シナリオ)
分析手法 ・ボトムアップアプローチ:個社別に2050年までの財務内容を推計
・トップダウンアプローチ:個社別分析の結果をもとに利益率やコスト率の平均をベースに推計
分析対象 エネルギー関連事業者(電力、ガス、石炭・石油関連の事業者)、鉄鋼関連事業者
分析期間 2022年12月末を基準として2050年まで
分析結果 与信関係費用:累計3億円~14億円

【物理的リスク】

  • 取引先の所在地や担保所在地について、ハザードマップ(想定最大規模と計画規模)と結合して複数確率年洪水の考慮を行い、当該災害発生時の債務者区分に与える影響(債務者区分影響)と保全に与える影響(保全影響)の分析を行いました。
  • 債務者区分影響は、企業が保有する建物や有形固定資産の被害額(直接被害額)と営業停止に伴う被害額(間接被害額)を推計し、企業の財務内容等に与える影響を算出、債務者区分を付与し引当の増加額を算出いたしました。保全影響は、建物等の担保棄損による引当の増加額を算出いたしました。
  • 算出した引当の増加額を2050年までに発生する確率と気候変動による洪水頻度の増加を考慮し、複数シナリオでの引当増加額を算出いたしました。
  • また、同様に銀行本支店の洪水による固定資産の毀損についても推計を行いました。
項目 概要
リスクイベント 洪水による①融資先の事業の中断や事業拠点の直接被害に伴う財務内容の悪化②担保物件の毀損③銀行本支店の資産の毀損
シナリオ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によるRCP(代表的濃度経路)シナリオ(RCP2.6:2℃シナリオおよびRCP8.5:4℃シナリオ)
分析手法 ・ハザードマップのデータ(想定最大規模、計画規模)から洪水発生時の取引先の直接被害額と間接被害額から財務への影響と担保(保全)への影響を算出したうえで、シナリオを踏まえ推計した2050年までの洪水発生確率・洪水頻度の増加を勘案し、与信関係費用の増加額を算出
・銀行本支店については建物被害額を算出。
分析対象 貸出のある国内法人および個人事業主、銀行本支店の固定資産
分析期間 2022年12月末を基準として2050年まで
分析結果 与信関係費用:3億円~5億円、銀行本支店被害額:最大1億円

【シナリオ分析の結果】

今回の分析対象やシナリオの前提条件のもと、移行リスクでは与信関係費用が累計で3億円~14億円、物理的リスクでは与信関係費用が3億円~5億円、銀行本支店の資産の毀損は最大1億円となり、ポートフォリオ全体への影響は限定的であるとの結果となりました。
引き続き対象セクターの拡大など充実化へ取り組んでまいります。

炭素関連資産

当行の与信残高(※1)に占める炭素関連資産(※2)の割合は31.79%です。

  1. ※1)2023年3月末の貸出金、支払承諾、外国為替、銀行保証付私募債の合計。(ただし、再生可能エネルギー発電事業として太陽光発電事業を除く)セクターの分類方法については、日本銀行が制定した「業種分類一覧表」の分類を基に、当行が判定。
  2. ※2)炭素関連資産:当行では2021年10月におけるTCFDの一部改訂を踏まえ、炭素関連資産を4つのセクター別に定義しています。

当行与信残高に占める4セクター毎の割合は以下のとおりです。

エネルギー 運輸 素材・建築物 農業・食料・林産物
0.84% 2.95% 26.15% 1.85%

機会

当行は、地域とお客さまの環境負荷低減と脱炭素経営実現へ向けた取組みに積極的に関与することにより、環境や社会の課題解決に貢献するとともに、持続可能な社会実現と企業価値向上を図ってまいります。
また、脱炭素社会への移行に伴い、お客さまの資金需要に対するファイナンスの提供やコンサルティング等ソリューションの提供を通じて脱炭素社会の実現に取組んでまいります。今後、より多くのビジネス機会を創出するため、お客様の温室効果ガス削減やエネルギー効率の向上に向けた取組みの支援等、脱炭素化を支援するサービスを充実させてまいります。

【当行のサステナビリティ支援ソリューション】

お客さまのニーズ
サステナビリティに向けた
実効的な取り組みを始めたい
脱炭素に向けた課題把握や目標設定を
行いたい
SDGsに関する取り組みを始めたい
千葉興業銀行のソリューションラインナップ
サステナブルファイナンスの提供 ・ポジティブインパクト・ファイナンス
お取引のGHG排出量可視化、目標設定 ・GHG排出量算定支援
・SBT認証支援
SDGsに関する取組み支援 ・ちばSDGsパートナー登録推進

リスク管理

地域の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄にあたって、気候変動をはじめとする様々なリスクがあると認識しております。
また、気候変動に起因するリスクが、地球環境や地域経済のみならず、当行の経営戦略や財務計画に大きな影響を与えるリスクであると認識しております。当該リスクについては、影響を把握・分析するとともに、信用リスク管理やオペレーショナルリスク管理等、統合的リスク管理の枠組みで対応する体制を構築してまいります。

環境・社会に負の影響を与える可能性のある特定のセクターへの投融資に関しては、「投融資ポリシー」を定め、これを公表しております。ポリシーに基づいた責任ある投融資を通じ、地域金融機関として、環境・社会的課題の解決に取り組むお客さまとともに、持続可能な社会の実現に努めてまいります。

指標と目標

ESG投融資・サステナブルファイナンス

当行では、地域の環境保全および経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄に貢献することを目的とするファイナンスを「ESG投融資・サステナブルファイナンス」と定義し、推進しております。

【ESG投融資・サステナブルファイナンスの主な商品】

  • 「サステナビリティ・リンク・ボンド」や「グリーンローン」など、国際原則・政府の指針を基準としたローン商品や債券
  • お取引先のSDGs達成に向けた取組支援を行うローン商品
  • SDGsの取組みに寄与する私募債の引受
  • 環境負荷低減をはじめとした、地域振興や人材育成など地域の持続的な発展・繁栄に貢献する融資 等
    • 上記以外の商品も含みます。

ESG投融資・サステナブルファイナンスの実行額目標および実績は以下の通りです。

ESG投融資・サステナブルファイナンス累計実行額 累計実行額目標 2022年度実績
中計(2024年度まで) 3,500億円 1,416億円
2030年度まで 1兆円

CO₂排出量の削減

【千葉興業銀行グループ カーボンニュートラル宣言】

2023年8月、当行グループは持続可能な社会の実現に向けて2050年度までにCO2排出量をゼロにするカーボンニュートラル宣言を行い、CO2排出量削減目標の見直しを行いました。(対象はScope1+2)
引続き、気候変動をはじめとする環境課題の解決に資する取組みを一層推進し、地域の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄に貢献してまいります。

【千葉興業銀行グループ CO2排出量・削減率の実績】

  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律(いわゆる省エネ法)に基づく定期報告書におけるScope1およびScope2のCO₂排出量となります。

気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションの利用

当行は、日本銀行が行う気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション(以下、気候変動対応オペ)の対象先に選定されています。
気候変動対応に資する投融資と判断するにあたっての基準および適合性の判断のための具体的な手続きを下記のとおり定め、脱炭素への取り組みを積極的に行ってまいります。

気候変動対応オペにおける対象投融資に関する基準および適合性の判断のための具体的な手続きの開示[PDF:117KB]

対象投融資の実績(残高):147億円(2023年9月末)