事業承継とは?取り巻く環境や課題、承継種類について徹底解説

事業承継を取り巻く環境:経営者の高齢化

現在、中小企業経営者の多くは1940年代に生まれた団塊世代で形成されており、高齢化が進んでいることは周知の通りです。

中小企業庁が策定した「事業承継ガイドライン」のデータによると、1995年頃は47歳前後だった平均年齢は2015年には66歳前後になっています。1995年から2015年の20年間で経営者の平均年齢はおよそ20歳も高くなったということが分かります。このままのペースで進むと、2025年には中小企業経営者の6割超が平均的な引退年齢である70歳を超える状況です。

参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン

事業承継を取り巻く環境:後継者不在

経営者の年齢別にみた事業承継の準備状況*1をみても、60歳以降の中小企業経営者の約半数以上が事業承継の準備に着手できておらず、後継者が決まっていないようです。また、70歳代でもおよそ4割もの経営者が後継者未定の状況にあり、中小企業における後継者不足は深刻化しています。

事業承継には期限が設けられていないので、すぐに決断しなければいけないといった緊急性がありません。事業を継ぐ後継者が決まらずとも、日々の仕事に忙殺されることから、経営者自身の健康上の問題がなければそのまま経営を続けるといった背景もあります。
しかし、事業承継にかかる期間は長期にわたることが多く、すぐに事業を引き継げるわけではありません。経営者の平均的な引退年齢が70歳であることを考慮すると、事業承継の準備は早期に進める必要があると言えるでしょう。

1 中小企業庁「事業承継ガイドライン

事業承継の種類

事業承継の手法として「親族内承継」「MBO(従業員承継)」「事業承継型M&A」が挙げられます。

親族内承継

親族内承継は、経営者の兄弟・配偶者・子どもなどの親族を後継者に選ぶ方法です。従業員や取引先などの立場からすると、赤の他人である第三者が承継するよりも、親族のほうが歓迎しやすいといったメリットがあります。
早い段階で後継者への事業承継を決心することで、後継者の育成や引き継ぎにも余裕が持てます。さらに自社株式や財産などをどう移転していくかということに関しても後継者が決まっているからこそ早い段階で準備をすることができます。
その一方、後継者候補が複数人いる場合は、資産や遺産などの相続トラブルや経営権の分散といったトラブルに発展する可能性もあります。また、折角決めた後継者に経営者としての資質が万が一ない場合は、経営悪化を引き起こしてしまう恐れもあります。

親族内承継に関する詳しい解説はこちら

MBO(従業員承継)

MBO(従業員承継)は「Management Buy Out」の略称であり「現経営陣等による自社株式の買収」を意味します。つまり「親族以外」の役員や従業員に事業を承継する方法です。(以下、MBOと表記)
親族内に後継者候補がいない場合、社内の実情を熟知しており高い経営能力がある従業員を候補として検討します。MBOのメリットは、自社の事業や業界について長年関わってきた優秀な人材を後継者とすることで、安心して経営を引き継げることです。また、社内の従業員や取引先などの関係者からも心情的に受け入れられやすいでしょう。

しかし、親族内で理解を得るための時間を必要とする場合や、社内での権力争いが勃発する恐れもあります。そして、自社株式を有償で引き継ぐ場合の資金負担が大きな問題になってきます。

MBOに関する詳しい解説はこちら

事業承継型M&A

M&Aとは、第三者に株式譲渡等することによって事業承継することをいいます。合併の「Merger」と買収の「Acquisition」それぞれの頭文字をとったものです。(以下、M&Aと表記)
親族内や社内に後継者候補となる人物が見当たらなかったとしても大事な会社の発展を社外の会社や人物に託す方法もあります。それにより今まで一緒に働いてきた従業員の雇用維持はじめ、新しい空気が入る事により会社、また個人の成長を期待することができます。当然のことながら、託す会社や人物は慎重に選ばなければいけませんし、経営者が変わることによって従業員や、取引先、顧客に受け入れらないというようなことが起こらないように、承継前には十分な説明が必要になります。

事業承継型M&Aに関する詳しい解説はこちら

事業承継が難しい場合は、廃業(清算)という手段になる

「有力な後継者が見つからない」「資金繰りが厳しい」「時間的な余裕がない」などの理由で、事業承継がうまくいかない場合、廃業も選択肢のひとつに挙がります。廃業とは、経営者自身で事業を精算することです。廃業する、しないの意思決定は経営者自身の判断にゆだねられることになりますので経営に問題がない場合でも廃業の選択は可能です。
一方で、個人保証のある借り入れを抱えている場合は返済する必要があります。他にも、事務所や店舗を借りている場合は退去費用や、法務局で解散登記を申請するための費用負担もかかります。その結果、経営者の手元に老後の生活資金が残らないことも考えられます。 廃業は倒産とは異なりますが、廃業するためにもそれなりの負担がかかることを念頭に入れておきましょう。

事業承継のお悩みや相談はちば興銀へ

経営者にとって、事業の発展拡大とともに経営権を後継者へ承継する「事業承継」は、重要な経営課題です。後継者探しや事業引き継ぎに時間を要するため、早期の対策が功を奏します。
ちば興銀では、事業承継のご相談にお応えできるサポート体制を整えております。

陣内 壮(じんのうち そう)

陣内 壮(じんのうち そう)

生年月日:1991年3月20日
資格:中小企業診断士、MBA(経営管理修士)
明治大学経営学部を卒業後、中小企業診断士及びMBA(経営管理修士)を取得。 資格取得後は、大手企業中心とした支援に従事